2008年8月9日

長崎原爆の日63周年に向けて

SATA Foundation
代表 佐 多 保 彦

2008年に入って以来、自然災害が多発しています。5月には、サイクロン「ナルギス」がミャンマーを襲い、自然災害としては同国で史上最悪の被害をもたらしました。9万人以上が死亡、行方不明者は5万6千人にのぼり、被害総額は100億ドル以上と推計されています。同じ月に、中国四川省で、汶川州を震源とする地震が発生し、6万9千人以上が死亡、480万から1100万人もの人々が住む家を失いました。さらに世界で最も進んだ技術大国であるはずの米国では洪水や山火事が頻発、多くの地域で被害を出しています。こうした災害の例は枚挙に暇がありません。

これらの災害は人間の活動による気候変化によってもたらされたと説明する科学者もいますが、人的災害ではありえない地震など、その意見に異論を唱える科学者もいます。とはいえ、明らかに人為的に引き起こされ、人為的であるからこそ避けられる災害はそのほかに無数にあります。人災の最たるものが世界中で今も続く戦争であり、武力紛争です。ソマリア、スーダンのダルフール、中東……そして1945年8月6日に広島に、3日後の8月9日に長崎に落とされた原爆を忘れることはできません。

一発の原子爆弾が広島市の三分の二を破壊し、7万人から14万人を即死させました。そして何十万人もの被爆者がその後、火傷や放射線、それらによる後遺症によって亡くなっていきました。そしてもう一発は長崎に投下され、即死者は4万人から7万5千人、生き残った人々も、自然の摂理に反する原因によって、早すぎる死を迎えたのは膨大な数にのぼります。

こうしてみると、世界で最も深刻な自然災害も、人類の作り出した兵器によってもたらされる被害に比べれば軽微に思われるほどです。核兵器は現在も多くの国が保有しています。しかも、無差別に罪もない市民の安全を脅かす武器はこれにとどまりません。その一つがクラスター爆弾です。クラスター爆弾は航空機から投下され、あるいはミサイルで発射され、何百もの手榴弾ほどの大きさの小型爆薬(爆発性子弾)を散布します。爆発すると、子弾の一つ一つから金属片がおよそサッカー場ほどの面積に撒き散らされます。2006年に投下された10万個ものクラスター爆弾の子弾が、今もレバノン南部の地上に散乱し、いつ人々を死傷させるか分かりません。2008年5月30日、アイルランド・ダブリンにおいて「クラスター弾に関する条約」が採択されたことは喜ばしいことです。この条約は2008年12月2日から3日に開催されるオスロ会議で調印される予定になっています。しかし、一方で、クラスター爆弾を配備している国々が条約をボイコットしていることには心が痛みます。

今年はまた、世界的な食糧危機の年でもあります。これは地球温暖化と、エネルギー価格の高騰を受け、代替燃料としてバイオ燃料などのアグロ燃料に世界中の穀物が投入されたことが原因になっています。 何千億ドルもの資金を軍備予算に費やすよりも、それを食糧生産や人類の福利のために振り向けるほうがはるかに望ましいことを、世界は再認識しなければなりません。世界中の人々に戦争と武力紛争の悲惨さを思い起こさせるために、世界はそれにふさわしい象徴が必要なのです。

2008年7月初旬、ユネスコは新しい世界遺産を登録しました。パプアニューギニアの湿地埋立地の1万年前の農業遺跡から、ベルリンの20世紀に建設された住宅団地6箇所まで幅広い文明がカバーされています。ベルリンの住宅団地は当時の新しい潮流である、社会主義的住宅建築であり、そのスタイルは20世紀を通じてさまざまな建築手法に影響を与えたものです。ユネスコの世界遺産リストには現在、145カ国878箇所が登録され、そのうち679箇所が文化遺産、174箇所が自然遺産、そして25箇所が複合遺産です。

ここで再び繰り返したいのは、ユネスコ世界遺産リストに平和と人道主義について道徳的メッセージを伝える遺産が欠けていることです。しかし、それこそが今日の我々、物質主義が横行する世界がぜひとも必要とするものではないでしょうか。広島平和記念資料館(原爆ドーム)は、1996年より、その意味にふさわしく世界遺産リストに登録されています。

一方、長崎の場合は爆心地に近い浦上天主堂は灰燼に帰し、奇跡的に焼失をまぬがれたのは、唯一、大聖堂のマリア像の頭部だけでした。この黒く焼け焦げたマリア像の頭部は、世界平和のシンボルとなり、科学知識の濫用によって無垢な命の犠牲の上に、戦争の大義を追及するおろかさを我々に語りかける存在です。世界中の2万人以上の人々が、このマリア像は平和の象徴として国際的に認知されるにふさわしいとの意見に賛同しています。原子爆弾による破壊から63年、長崎のマリア像はSATA Foundationの理念——「科学は生かすためにあり、殺すためにあらず」——を象徴してきました。わたくしどもSATA Foundationは、よりよき、より人道的な世界の実現を目指し、さまざまな努力を行っています。その活動やプロジェクトの詳細についてはホームページでご紹介していますのでご覧ください。http://www.madonnagasaki.org

SATA Foundationのミッションのひとつとして、広島・長崎の原爆投下をしのび、「平和祈念自転車競走」を2005年から毎年8月、フランスで開催しています。オランダ元首相Mr. Andreas van Agt(アンドレアス・ファン・アフト)、ツール・ド・フランスで5回優勝を飾り、わたくしどもの自転車レースで冠の役割を担ってくださるMr. Bernard Hinault(ベルナール・イノー)をはじめとする著名人が、500人を超えるサイクリストとともに、この平和ラリーを熱心に支持しています。ラリーの収益金は、SATA Foundationのミッションに沿うチャリティーに寄付されます。今年は、長崎から2名、広島から2名のサイクリストが平和祈念自転車競走に参加する予定です。

わたくしどもの活動は、大部分が皆様の寄付金によって支えられております。多少にかかわらず、ご厚志をいただけましたなら幸いです。

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