2009年8月9日

長崎原爆の日64周年に向けて

SATA Foundation
代表 佐 多 保 彦

 2008年は自然災害と世界的な食糧危機に見舞われた一年でした。このいずれもが気候の変化と地球温暖化によるものだといわれています。そして今年は人為的な回避されるべき災害が続いています。2008年12月27日から2009年1月8日に起こったガザ戦争では、約1,500人が亡くなり、幸せな平和に満ちた新年を迎えようという希望が打ち砕かれました。人間の欲によって再び引き起こされた世界金融危機のために、全世界で多くの人々が苦境にあえいでいます。航空輸送技術の進歩にもかかわらず、航空機事故が相次ぎ、特に人為的要因が関与する場合、科学の進歩は必ずしも生命の安全を保証するものではないことを教えています。そして何よりも今、世界が直面しているのは核兵器による未曾有の危機です。

 パキスタンで武装活動を行うタリバンは核兵器を保有し、急進派が敵に対してこれを使用すると宣言しました。そして世界は1945年8月6日の広島の原爆投下、そしてその3日後の長崎の原爆投下以来、64年間経験することのなかった核攻撃の大惨事まであわやというところに立たされることになりました。

 パキスタンにおける核の脅威は非国家主体によるものですが、一方で、北朝鮮による核の脅威は北朝鮮政府そのものが主導しています。北朝鮮はミサイルの打ち上げ実験を行い、国連安全保障理事会の制裁措置にも関わらず核兵器開発プログラムを推し進めています。まさに北朝鮮体制は、世界中を脅迫して援助を強請しうるか否かに生き残りをかけおり、同国の指導者層は飢えに苦しむ一般の北朝鮮国民を犠牲にしてそこから恩恵を受け続けています。このようなことが唯一の被爆国である日本のすぐそばで起こっているのです。

 ただし、タリバンと北朝鮮による核兵器の使用の犠牲となるのは人類全体といえるでしょう。広島と長崎の亡霊が蘇り、我々すべて、とりわけ核兵器を保有する者たちに付き纏っているのです。だからこそ世界から、備蓄されている核兵器及びその他の大量破壊兵器、そして、国際人道法に背く、無差別な殺傷行為を引き起こすものの全てを廃絶しなければなりません。

 長崎原爆投下63周年によせた拙メッセージからこの12ヶ月間に、非武装化の兆しが現れてきたのは心強いことです。今年5月末、ロシアと米国がシベリアに世界最大の化学兵器廃棄工場を公式に開設しました。米国政府は10億ドルを補助し、ロシアは2億5千万ドル以上、さらにその他のヨーロッパ各国が2億ドルを拠出しました。こうした足並みをそろえた動きは、1997年の米露間の化学兵器禁止条約による2012年までに化学兵器を廃棄するという取り決めに沿ったものです。

 また別の動きとして、前回のメッセージで触れたクラスター弾に関する条約(CCM)が2008年12月3日、署名のために開放されました。この条約は30カ国が批准したあと発効します。この文章の執筆時点で、10カ国、すなわち必要な国数の3分の1が批准を終え、他に98カ国が署名を行い、批准手続きに入ります。CCMが核拡散防止条約(NPT)よりも順調に進むことを願いましょう。NPTは189カ国が参加し、そのうちには5カ国の核兵器保有国が含まれ、しかもその国々は国連安全保障理事会の常任理事国です。しかしNPTはいまだに核兵器の廃絶を達成できず、世界はこれまでにない核の脅威に晒され続けています。新たに選出され、2009年11月に就任する国際原子力機関(IAEA)事務局長は日本の天野之弥大使です。核攻撃を受けた唯一の国である日本の人々の、核武装競争や核配備を終結させようという強い願いを実現するために、天野氏の尽力が望まれます。

 2009年6月末、スペインのセビリアにおいて、ユネスコの世界遺産委員会が世界遺産リストに新たな世界遺産を追加しました。世界遺産リストを見渡すと、もしそうした世界遺産が文化・歴史・芸術・宗教的価値を全く重視しないならず者国家や過激な非国家主体による無差別核攻撃の目標地点に存在していたら、果たして後世に残るだろうかと不安にかられます。しかし、核の惨禍を生き延び、世界平和を人々に訴えるシンボルが一つあるのです!

 浦上天主堂は1945年8月9日午前11時02分、ボックスカーと名づけられた航空機から投下された原子爆弾「ファットマン」による破壊の爆心地にありました。そのマリア像の頭部は核の業火を生き延び、今、再び天主堂内の元の場所に収められています。世界中の政府や団体はこの平和の象徴に、それにふさわしい認識を与えるべきです。長崎のマリア像は戦争と武力対立の果てしない苦しみを人類に思い出させるために、まさに世界遺産となるのにふさわしい存在なのですから。

 少なくとも、長崎のマリア像は私に世界平和と人道的活動を推進するためにSATA Foundationを設立するきっかけを与えてくれました。SATA Foundationのスローガン、「科学は生かすためにあり、殺すためにあらず」はより素晴らしく、より人道的な、そして科学が破壊ではなく建設的な役割を果たす世界の実現のために努力するよう世界中の人々に呼びかけることを目指しています。弊団体の活動やプロジェクトの詳細はホームページでご紹介しておりますのでご覧ください。

 5年間連続して、SATA Foundationでは広島・長崎の原爆の悲劇を記念して、人類の平和への理解を促し人道的大義への基金を集めるため、平和祈念サイクルロードレースをフランスで開催してきました。今年の平和祈念サイクルロードレースは8月1日に行われ、過去数年の500名前後の参加者を大きく上回る約800名のサイクリストの参加が見込まれています。

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