2013年8月9日

長崎原爆投下68周年によせて

SATA Foundation
代表 佐 多 保 彦

この12か月間で、世界はより良い方向に向かってきたでしょうか。そうは見えません。誤った舵取りと人間の欲が生んだ経済危機は、世界各地で今も猛威を振るい、多くの人々が失業と貧困の中に取り残されています。シリア、アフリカの各地をはじめ、武力紛争やテロも依然として続いています。そのうえ、ある国家は大型核兵器を他国に対して使用すると脅し、これまで以上にその脅威が国際社会に迫っています。北朝鮮はまだこの威嚇を実行に移したことはありませんが、核兵器が存在する限り、人類の大量殺戮の可能性はいつもそこにあることを、もう一度、肝に銘じる必要があります。 

2013年4月2日、国連総会で武器貿易条約が採択され、10年以上にわたる国際的な努力が実り、明るい兆しが見えました。これは年間700億ドルに上る通常兵器の取引を制限する初の条約で、戦争やその他の武力による暴力行為を企図する者の手に、武器がわたりにくくするものです。この条約により透明性かつアカウンタビリティ(説明責任)をもつシステムが作られ、武器輸出国は条約の対象となる通常兵器によって発射、打ち上げ、到達せられる弾薬等の輸出を制限する規制システムを、国として確立・維持する責任を負うことになります。また、通常兵器、あるいはそれに使用される弾薬、部品等の移転によって平和や安全が脅かされる場合や、そのような武器が集団虐殺、人権に対する犯罪、国際人道法の重大な違反、民間人への攻撃、そのほかの戦争犯罪に利用されることが分かっている場合、それらの移転を認めないことが合意されています。輸出が禁止されない場合では、各武器輸出国は、輸出の承認を行う前に、通常兵器及び関連品によって平和や安全が損なわれる、あるいは国際人道法あるいは人権の重大な侵害がたらされる可能性、さらにはテロや国境を越えた組織犯罪が引き起こされる可能性の有無について評価を行います。条約は2013年6月3日に署名式が行われ、50か国の加盟手続きが完了したのち、90日後に発効します。

この武器貿易条約は、1991年の国連軍備登録制度の対象となる通常兵器の7つの主要なカテゴリー(戦闘戦車、装甲戦闘車両、大口径火砲、戦闘用航空機、攻撃ヘリコプター、軍用艦艇、ミサイル及びミサイル発射基)及び小型及び軽量武器を網羅しています。しかし、武器貿易条約では核兵器は対象となっておらず、残念ながら核兵器に対する有効な規制はいまだにありません。1996年9月10日の国連総会で採択された包括的核実験禁止条約(CTBT)は159か国によって批准されましたが、CTBTの付属書にある44か国すべての批准という条件が満たされていないために、発効に至っていないのです。そしてこの44か国のうちの1つ、北朝鮮は〝核戦争抑止〟のために核兵器を保持することを主張する政治家たちにとっての悪夢と化しています。しかし優先されるべきは良識ではないでしょうか——富める国も貧しい国も、大国も小国も、すべて核兵器を完全に廃止すべきです! 

核兵器によって無差別にもたらされる損害や人的被害のことを考えてみましょう。長崎が1945年8月9日、核弾頭による爆撃を受けたとき、4万人から7万5千人の犠牲者が瞬時にしてその命を失いました。その3日前には別の核弾頭により広島で7万人から14万人が即死しています。核兵器は武力紛争に関わりのない民間人も、国際人道法で保護されている宗教施設などの貴重な物も容赦なく破壊します。

より良い、より人道的な世界を達成することをミッションとしているSATA Foundationは、核兵器のもたらす無差別な残虐さの記憶を切実によみがえらせるものとして、長崎の原爆の爆心地・浦上天主堂の聖母マリア像の焼け焦げた頭部をロゴに使用しています。私たちは、全ての国家、国民が、科学知識と納税者の血税を殺人兵器——とりわけ世界全体の備蓄量が約2万基にのぼる核弾頭の維持や増産に浪費するのではなく、福祉と生活水準の向上に費やすべきだと強く訴えています。

長崎のマリア像はスペインのゲルニカ市と、核兵器不拡散条約(NPT)のレビュー会議会期中にニューヨークの国連本部に展示されましたが、それを見に訪れた人たちは核兵器を強く非難し、核兵器は二度と使用してはならないと口をそろえていました。この像は、核兵器のない世界の力強いシンボルとして、1996年ユネスコ世界遺産に登録された広島平和祈念館(原爆ドーム)と同様、世界遺産指定を受けるに相応しい価値があります。より平和で人道的な世界を象徴する長崎のマリア像を、世界の人々に広く知ってもらいたいという私たちの願いに、どうかご賛同ください。

例年と同じく、SATA Foundationは、広島・長崎の原爆記念日をしのび、毎年行われている「平和祈念自転車競走」をフランスのシャイイ=シュル=アルマンソンで開催する計画です(www.courirpourlapaix.com)。今回の第9回平和祈念自転車競走は7月27日(土)に開催され、見込まれるサイクリストの参加者数はおよそ500名です。サーキットはヒロシマ(160 km)、ナガサキ(110 km)、トウホク(68 km)の3つが用意されています。本自転車競走の収益は、SATA Foundationのミッションに沿うチャリティに寄付されます。

SATA Foundationの理念に対し、皆様のご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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