2014年8月9日

広島・長崎原爆投下69周年によせて

SATA Foundation
代表 佐 多 保 彦

前回のメッセージから1年、今もシリアやアフリカ諸国をはじめとした多くの地域が武力闘争やテロリズムに蹂躙されています。ウクライナをめぐる東西の対立は、冷戦時代の再来を招き、その最前線では、いずれも核武装国である米国とロシア連邦がにらみ合っています。1945年8月、広島と長崎の原爆投下によって何十万人もの人々が言語に絶する惨禍を経験したことを思い起こし、 最後には外交努力が実り、決して核兵器に手段を求めることがないことを祈りましょう。

過去何年にもわたる毎年のメッセージの中で、私は、核兵器が存在する限り人類の大量殺戮の可能性は常にあると繰り返し述べてきました。例えば、1983年11月に「エイブル・アーチャー83」と名付けられたNATO軍の通常の指揮所演習がありましたが、ソヴィエト連邦は、これをNATOによる自国に対する核攻撃準備の隠ぺい策だと受け取りました。対抗して、ソ連は、東ドイツに戦闘機を配備し、厳戒態勢を敷きましたが、それには核兵器が搭載されていたのです。数十年を経て、関係諸国政府は、自分たちが全面核戦争勃発の危機に瀕していたことを悟り、慄然としています。この事件は、核戦争が綿密な作戦だけでなく、偶発事故や誤解によっても起こりうることを示しています。だからこそ、核兵器を所有するすべての国は、合計で約2万基と言われる核弾頭の備蓄を全廃し、将来の世代が、無差別に地上から消滅させられる恐怖にさらされず、平和に暮らせるようにしなければならないのです。

まさにこれを目指して、2014年4月24日、マーシャル諸島共和国は、ハーグの国際司法裁判所に、核保有国と考えられている9か国、すなわち、中国、北朝鮮、フランス、インド、イスラエル、パキスタン、ロシア、英国、米国を相手取り、一連の訴訟を提起しました。同国は、核武装競争の早期停止や同裁判所による判決後1年以内の核兵器全廃といった義務を履行するために必要なあらゆる手段を講じることを命じるよう求めています。マーシャル諸島の主張によれば、1946年から1958年まで、同地域は度重なる核実験場とされ、この間に、爆発の規模も人の住む地域からの距離も様々な核実験が67回も行われてきました。これらの実験による核物質や核廃棄物のマーシャル諸島への甚大な影響は現在まで続いており、同国は、マーシャル諸島の市民のみならず、人類全体の生き残りのために訴えています。

マーシャル諸島の核実験による苦しみは、69年前の広島と長崎の原爆による被害と犠牲に重なります。ただし、この2つの日本の都市で瞬時に失われた人命の数は、人類史上かつてないものでした。ご存じのとおり、Sata Foundationのミッションは、より良い、より人道的な世界を打ち立て、守ることであり、私達のロゴには、長崎の原爆の爆心地にあった浦上天主堂の聖母マリア像の頭部を戴いています。命を害するのではなく、より良く生きるために科学を活用することを、我々は強く訴えます。原爆による強烈な熱線によって焼け焦げたこの像は、かつてスペインのゲルニカ市に展示されました。この町は、スペイン内戦の恐怖を経験し、当時の市民の苦しみを描いた絵画『ゲルニカ』は、ピカソの最高傑作のひとつです。ピカソの作品のように、長崎のマリア像は、世界平和の象徴であり、戦争の恐怖と、科学知識の濫用がもたらすものを未来永劫、私達に思い起こさせてくれる存在です。また、この像は、近年、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)のレビュー会議の開催期間中に、ニューヨークの国連本部にも展示されました。そうした点からも、この像は、1996年からユネスコ世界遺産に登録されている広島平和記念館(原爆ドーム)と同等の国際的認知を得てしかるべきものです。今一度、より平和で人道的な世界の象徴として長崎のマリア像を世界に認めてほしいというわたしたちの求めに賛同していただけますよう、お願い申し上げます。

今年は、広島・長崎の原爆記念日に思いを致し、毎年、フランスのシャイイ-シュル-アルマンソンで行われている「平和祈念自転車競走」が10周年を迎えます(www.courirpourlapaix.com)。8月2日(土)に開催が予定され、約500名のサイクリストがエントリーしています。サーキットは、ヒロシマ(158km)、ナガサキ(113km)、トウホク(72km)の3つが用意されています。本自転車競走の収益は、Sata Foundationのミッションに沿うチャリティに寄付されます。

今後とも、Sata Foundationの理念に対する皆様のご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

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