2016年8月9日

広島・長崎原爆投下71周年によせて


2016年5月27日、バラク・オバマ大統領はアメリカ合衆国大統領として初めて、1945年8月に核爆弾による攻撃を受けた都市のひとつを訪れました。注目すべきなのは、戦争において核兵器を使用した経験を有する唯一の国の大統領が、世界に向けて、戦争をなくすために過去の教訓から学ぼうと呼びかけたことです。オバマ大統領は、人類に対し、「広島と長崎が、核戦争の幕開けとしてではなく、われわれの良心の覚醒が始まったときとして記憶される未来」を選ぼうと強く促しました。「人間社会の成熟を伴わない技術の進歩は、われわれに破滅をもたらしうる。原子の分裂を実現させた科学における革命は、同時に良心の革命を必要とする……」 。スピーチの前に、大統領は広島平和記念資料館の芳名録に、世界が「共に平和を広め、核兵器のない世界を追求する勇気を見出すことを願う」と思いを記しました。

皆様には、私、佐多が、毎年広島・長崎の原爆投下記念日に寄せてきたメッセージを再度お読みいただきたいと思います。オバマ大統領と私が同じ思い、目標を共有していることに驚かれるでしょう。ただ、大統領には、これを実現する手段と権力がありますが、私には、核兵器廃絶に向けて共に力を合わせることへの理解を求め、人々に精一杯呼びかけることしかできません。

世界にはまだ大量の核兵器があり、〝敵国〟に向けていつでも発射できる状態にあります。2015年、核兵器不拡散条約(NPT)の再検討委員会がニューヨークの国連本部で開かれましたが、核兵器廃絶について具体的な進展には至りませんでした。思い起こせば、2010年にも同様のNPT再検討会議が開催されました。このときは、長崎の原爆爆心地にあった浦上天主堂のマリア像頭部が会議場の国連本部に展示されました。人類に対し、いかなる人も、物も、たとえ軍事攻撃の対象とすべきではない神聖な信仰の地であっても、核兵器の無差別な破壊から逃れることはできないと、警鐘を鳴らそうとしたのです。

他国による侵略や武力攻撃を「抑止」するために、核兵器の保有に「安心感」を抱く国もあります。又、非友好国による侵略や武力攻撃の脅威から国を守るため、「核の傘」に頼る国もあります。こうした背景により、核兵器は存在し続けるのです。政府の財源は、核兵器の製造、整備、維持にかかる莫大なコストに振り向けられ、貧困撲滅、誰もが受けられる医療の提供、自然災害の軽減策など、もっと価値のある目的が犠牲にされます。SATA Foundationは、これら価値ある目的に、たとえわずかでも貢献することを目指しています。

皆様に、より良く、より人道的な世界を実現するため、SATA Foundationのミッションにご賛同いただくことをお願いいたします。わたしたちのロゴである長崎のマリア像は、世界平和を痛切に希求する声なき声の象徴です。それは同時に、生命に害をなすのではなく、より良い生活をもたらすために科学を行使することへの訴えでもあります。この像は、ピカソによる世界的傑作「ゲルニカ」に匹敵する象徴的意味をもち、1996年にユネスコの世界遺産に登録された広島平和祈念館(原爆ドーム)と同様、世界に知られるべき存在であると、改めて繰り返したいと思います。この考えに20000人以上の人々がご賛同くださり、本ホームページの請願書に署名してくださいました。

フランスのシャイイ-シュル-アルマンソンで毎年開催される平和祈念自転車競走は、今年も広島・長崎の原爆投下71周年を記念して2016年7月30日に開催され、例年どおり約500名のサイクリストが参加しました。平和祈念自転車競走による収益はSATA Foundationのミッションの遂行に当てられます。今年、SATA Foundationが開催する平和祈念自転車競走は12回目を迎えました。今、そのミッションのもつ重要性と意義は、ベルナール・イノー氏をメインサポーターとして迎え、このユニークな平和祈念自転車競走を初開催したときの想像をはるかに超えています。わたしたちは、ベルナール氏がこの自転車競走に力強いサポーターとして関わり、彼自身、このレースに真剣に参加してくれていることに心から感謝します。

かつて、ベルナール・イノー氏は、長崎のマリア像が、長崎に落とされた原爆で両方の瞳を喪った理由について、インタビュアーにこう語りました。「彼女はもう、この混乱した世界を見たくないのかもしれない」。われわれは、聖母マリアがその視力を完全に取り戻す日——世界が生きるにふさわしい、より良い場所になる日を待ち望んでいます。その日まで、この地球に平和を実現するために可能な限りの努力を続けていく所存です。

SATA Foundationに対する皆様のご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 

SATA Foundation
理事長
佐多保彦

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