SATA Foundation 2013年度 年次報告

I.寄付

2013年度、SATA Foundationは以下の寄付を実施しました。

(1)シェチェン診療所(ネパール カトマンズ・ボダナート)(http://www.karuna-shechen.org

 2000年のシェチェン診療所設立以来、継続して寄付を実施しています。
 シェチェン診療所はネパールの首都カトマンズ郊外の人口密集地に所在し、患者の宗教、民族、政治的背景にかかわらず、難民やインド、ネパール、チベットの山岳民族を含む一大コミュニティにおいて、質の高い医療を提供しています。医療サービスはコストスライド制で、特に経済的に困窮している患者には、すべての医療行為および医薬品が無償で提供されます。月に3,500人を超す患者が診療所を受診します。診療所には、内科、薬局、分析ラボ、結核(D.O.T.)クリニック、整形外科、産科、HIV感染者・AIDS患者とその家族のためのカウンセリング、ホメオパシー、チベット伝統医療、チベット伝統薬調合所、鍼療法、歯科、歯科ラボの各科・設備があります。

 2013年、SATA Foundationの寄付は主に診療所の次の事業の援助に充てられました。
(a) 「キッチンガーデン・プログラム」:インドにおける栄養失調問題(インドの児童の栄養失調率は中国の約5倍、サハラ以南のアフリカ諸国の2倍以上:世界銀行調べ)への対策として、5歳未満の子供の80%、50歳未満の女性の68%が栄養失調状態にあるビハール州の18の貧しい村に、1000か所のキッチンガーデンを作るプログラム。2013年半ばから、このプログラムにより、選ばれた小規模農家と4か所の小学校に対し苗や種の提供、食糧としてより健康的な菜園を作る方法の指導が行われています。
(b) ヤルバン村の305名の生徒が通う中学校とその寮、ネパールでも特に辺境にあり、開発の遅れている上フムラ地域の近隣の小規模小学校7か所の施設の改善。
(c) インド・ガヤ地区の移動クリニックの運営。
(d) ネパールのバグルン及びドルポの辺境地帯における、骨盤臓器脱(POP)の予防に関する啓蒙活動。ネパール人女性の10人に1人以上が、骨盤の筋肉と靭帯組織の支持力が弱まって起こるPOPに悩んでいます。POPによって子宮脱が起こり、他の臓器に影響する場合もあります。妊娠を繰り返し、医療的な補助を受けずに出産した後、すぐに畑に出て重労働を行うことが、ネパールの農村地帯の女性の間でPOPが多くみられる重大な原因となっています。国連人口基金の研究によると、患者のうち82%が座ること、79%が歩行、89%が重い物を持ち上げることに困難を訴えています。多くの場合、POPは予防が可能です。不幸にして、羞恥心や無知からネパール人の母親たちは苦痛を訴えることなく耐え忍んでいます。各村では医療ボランティアを選出し、基本的な検査と、子宮底筋トレーニングなどの様々な予防法の訓練が行われています。症例が見つかった場合は、ボランティアによって患者は適切な地域の医師に紹介され、正式な検査と、必要に応じて十分な治療が行われます。多くの場合、これによって部分子宮脱、完全子宮脱を防ぐことができ、手術の必要もなくなります。SATA Foundationやその他の組織による寄付によって、何千ものネパール人女性の生活が改善し、将来的に苦しむ患者が減少しています。ネパール政府は健康に関する国の教育カリキュラムの一環としてこの予防と啓蒙プログラムに関与しています。


(2)寄付:Banyan Home Foundation

HIV/AIDSに感染した子どもたちのためのBan Rom Sai Children’s Homeを運営するBanyan Home Foundation(BHF)は日本の名取美和さんによって設立されました。
 2013年度のSATA Foundationの寄付により、Ban Rom SaiのHIV/AIDSに感染した子供たちは、Ban Rom Saiで企画された下記のイベントに参加し、地元の人たちとの交流を楽しみました:
(a) コミュニティ・スポーツ(2012年3月1日−2013年2月28日):バドミントン大会に68名、テニス大会に86名、ペタンク大会に70名の計224名がこのイベントに参加しました。
(b) 若者よ、本を読もうプロジェクト(2013年1月1日−12月31日):参加者は本を読み、その内容をまとめて出来栄えを競い合いました。毎月33名から50名の子供たちが参加し、1年間で計502名が参加しました。
(c) 事故と応急手当に関する実践的トレーニング(2013年10月19日):87名が参加しました。
(d) ナムプレー・ユース・フットボール・チーム・プロジェクト(2013年2月5日−12月31日):30名が参加しました。
過去数年にわたるSATA Foundationの定期的な寄付により、Ban Rom Saiの子供たちは自分たちの暮らす地域社会に順調に受け入れられつつあります。


(3)視覚障がい者のためのMata Lachmi Nursery
http://www.nab-jsr.org/nursery.html

 SATA Foundationはインド・ムンバイ市シオンにある視覚障がいのある子供たちのための学校、Mata Lachmi Nurseryに寄付を行いました。この学校では2歳から10歳までの幼い子供たちに教育と生活支援、食事の提供を行っています。


(4)Kranti http://www.kranti-india.org

インド・ムンバイの歓楽街に暮らす少女たちを支援するチャリティ組織、Krantiに対し、寄付を行いました。クランティは、少女たちが売春に走らないよう、教育や訓練を行っています。SATA Foundationからの寄付はKrantiのこの分野の活動資金となり、少女たちの心身の健康を守ることに役立てられます。
Krantiの活動についてのエピソード(「売春宿育ちの少女、奨学金を獲得」)がCNNで報じられています。
(http://edition.cnn.com/2013/07/06/world/asia/from-brothel-to-college/index.html?hpt=hp_c5)


(5)認定特定公益信託 NPO日本白血病研究基金

 2013年、SATA Foundationは認定特定公益信託 日本白血病研究基金に対し恒例の寄付を行いました。(所在地:日本白血病研究基金 〒105-0001東京都港区虎ノ門2-7-14、電話03-3593-3341、E-mail: luekaemia@flrf.gr.jphttp://www.FLRF.gr.jp/


(6)アジアにおける国際法整備(DILA)財団

SATA Foundationは引き続きアジアにおける国際法整備を推進するため、アジアの若い国際法研究者による特にすぐれた国際法に関する論文に対し、2005年から毎年、佐多賞(2000米ドル相当)を授与しています。受賞論文はアジアにおける国際法整備(DILA)財団の後援により、Asian Yearbook of International Law (「アジア国際法年鑑」:Martinus Nijihoff Publishersライデン/ボストン刊)に掲載されます。Asian Yearbookは世界平和と国際的法秩序の基礎である国際法に関するアジアの視点を世界に発信するものです。佐多賞はこのように、SATA Foundationの設立理念に謳われている「あらゆる文化、宗教、信条をもつ人々の間における平和の価値と普遍的人権の尊重に対する理解」を促進する一助となっています。

2013年は、インド国籍で、シンガポール国立大学において博士課程に在籍するプラバカール・シン氏の「Why Weild Constitutions to Arrest International Law (なぜ憲法を行使して国際法を無効化するのか)」に対し、2000米ドルの佐多賞が贈られました。


II. 東日本大震災被災者に対するSATA Foundationの活動

 2011年3月11日、日本の東北地方を襲ったマグニチュード8.9の地震と、それに続いた津波によって14000人以上が犠牲となりました。今も、何百万人もの人々の生活が、福島第一原子力発電所から漏れる放射能に脅かされています。これは近代に入って、日本が直面した最悪の自然災害です。SATA Foundationは東北地方の被災地に支援を行い、被災者が新たな困難に立ち向かう援助を行ってきました。
 SATA Foundation理事長である佐多保彦は、Foundationのボランティアとともに自ら定期的に被災地を訪れ、被災者が緊急に必要としている援助を行うとともに、自立、自尊の前向きな精神をもって、それぞれの地域で再び働けるように、就職支援や相談に応じています。
 SATA Foundationは、平和祈念自転車競走(IIIを参照)の募金及びその他の寄付金をこの活動の資金に充当し、SATA Foundationはこの目的のために佐多が設立した一般財団法人「連帯東北・西南」に寄付を行いました。


III. 長崎のマリア像と世界平和

 2005年8月の長崎原爆60周年に長崎のマリア像が浦上天主堂に返還され、SATA Foundationのマリア像に関わる目的はほぼ達成されました。SATA Foundation は引き続き、長崎のマリア像を象徴とする世界平和キャンペーンを実施していきます。
 2005年8月6日、SATA Foundationは広島(1945年8月6日)・長崎(同8月9日)の原爆投下60周年を記念し、Foundationの人道的使命を推進することを目的として、フランスにおいて「平和祈念自転車競走」及び関連事業を主催しました。第1回の大きな成功を受けて、平和祈念自転車競走はその後、毎年開催されています。
 2013年7月27日、フランス・ブルゴーニュ地方シャイイにおいて開催された第9回平和祈念自転車競走では、419名のサイクリストがゴールしました。このイベントでSATA Foundationのために集められた募金は、上記IIの東日本大震災の被災者への寄付の一部に充てられました。
 このフランスのシャイイにおける毎年のイベントをきっかけとして、日本をはじめ、世界各国で平和のための自転車競走が行われています。2009年から日本では、毎年、SATA Foundationが寄付を行っている明治神宮外苑大学自転車クリテリウム大会が開催されています。今年も、この大会が伝統として受け継がれますます盛んになることを願い、同大学自転車クリテリウム大会に対して、恒例の寄付を行いました。
第10回平和祈念自転車競走は2014年8月2日(土)に開催を予定しています。

Kriangsak Kittichaisaree教授
専務理事
SATA Foundation

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